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2009年6月28日 (日)

「愛妻は荒野を目指す」裏設定 人物

「愛妻は荒野を目指す」登場人物設定 第二稿


■ 赤羽根けい子 (けい子

【プロフィール】

愛妻A。震災後の過酷な東京において、カズオと幸せな家庭を築いている。子供は男の子がひとり。レストランの常連で、お客の顔見知りも多い。明るく前向きな性格で何事もあきらめない。なによりも家族を大切にし、これを守るためならば手段を選ばないと言う非情な一面もある。


【裏プロフィール】

生い立ちがハードだったため、「しあわせな家庭」に執着していた。手に入れるはずだった家族は震災で喪った。喪失による過度のストレスから現実逃避。実の弟であるカズオを亡き夫に見立て、擬似家族を演じている。けい子が守るものは限りなく現実化した自分の幻想、その平穏。


【嗜好】

もともと詩集を読むのが好き。国内の詩人のものより海外の詩人のものを好む。避難時に持ち出したリルケの詩集にはこうある。「明日世界の終わりが来ても私はリンゴの木を植えるだろう」この言葉が、幻視的な傾向さえ見られるけい子の自意識をこの世に繋ぎとめている。


※「明日世界の終わりが来ても私はリンゴの木を植えるだろう」

この一節はリルケの一節として詩ファンの間で知られるフレーズだが、実際はゲオルギウという詩人の一節。そうなってくると誰の詩でもいいじゃないか、ということで、「愛妻」の世界では「キュカ・スビサレータ」という架空の人物が詠んだという設定になっている。




■ 赤羽根和雄 (カズオ

【プロフィール】

赤羽根けい子の夫。けい子を愛し、やさしく見守る良き夫。しばしば感情を暴発させることもあるけい子だが、これに苛立ちのひとつも見せない。よき理解者であり、パートナー。


【裏プロフィ-ル】

けい子の弟。異常なまでのシスコン。過酷な幼少期を姉に守られたため、けい子なしで自我が成立しない。けい子の嘘に徹底的に付き合う覚悟。それはカズオにとっての幸福でもある。カズオが守るものはけい子の幻想。


【嗜好】

ジャズやフュージョンを好む。歌詞のある音楽を聴くことができない。

ジュースは飲めるが、水が飲めない。


【水が飲めないエピソード】(役者の柚木幹斗だけが知っていたエピソード)

震災直下、けい子夫妻トパーティーをしていた。生き埋めに。気絶する。

かろうじてつなぎ止めた命だった。意識が戻り、まず最初に感じた生理的な欲求は「水が飲みたい」であった。同じく生き埋めの状態であった赤羽根宗一郎(けい子の旦那)は即死しており、肉体が裂けていた。その死体はカズオより上にあった。

朦朧としたカズオの頭上に水分が垂れかかる。水と思って舐めたそれは、宗一郎の血だった。カズオが救出された後そのことを知り、三日三晩にわたり嘔吐を繰り返す。これがPTSDとなり、水が飲めなくなる。

■ 日浦正一 (ヒウラ、ショウちゃん

【プロフィール】

人形と生活を共にしている。周りからは狂人扱いされているが、震災後の東京に彼のような人間は多々存在するため、あまり疎まれていない。(周りが慣れているため)

いつもレストランにいる。

一説によれば、彼は妻を亡くしており、人形は妻の身代わりとのこと。よく人形と会話をしている。ヒウラが守るものは妻の記憶。


【裏プロフィール】

完全に正気。ただし、実際に妻に去られているため精神的な傷は負っている。自己治癒の一環として狂人を装っている。(ヒウラは日本大学文理学部心理学科卒。演技療法として自分に施した治療)

「あいつら」と呼ばれる夜盗の集団に去った妻がいるとの噂を聞き、妻の消息の確認のため、日々レストランに入り浸り決定的な情報を求めている。カズオは旧知の間柄であり、ふたりの秘密は知っている。


【嗜好】

トマト、パプリカ、一味唐辛子、リンゴ、いちご、などとにかく赤いものが好き。妻が好きだったから。


■ 町田可奈女 (カナメ

【プロフィール】

愛妻B。震災後の東京を世界に発信する機関紙「デッドストック・トーキョー」の編集者、カメラマン。ジャーナリストとしての確固たる思想と、アーティストとしてのロマンティシズムを併せ持ち、部下(マユミ、イク)から尊敬されている。

震災で夫を亡くした未亡人。ただし、当時から既にシラサワと不倫関係にあり、夫を亡くしたことで不倫が成就されている。罪悪感を背徳感に変換し、これを快楽として自分を納得させている、強い女。カナメが守るものは、自分の虚像。


【裏プロフィール】

非常に臆病な性格。暴力アレルギー。ジャーナリストとしては街を脅威にさらす「あいつら」の悪行を伝えなければならないが、恐怖により踏み込んだ取材ができない。


【嗜好】

ベジタリアン。

触れることを拒むため、セックスが成立しない。歪んだ形で成立させている。




■ 古賀眞由美 (マユミ

【プロフィール】

機関紙「デッドストック・トーキョー」の編集者。語学に長け、翻訳の担当。カナメを慕うジャーナリスト。仕事の面でも女としてもカナメに心酔している。デスクワークを担当することが多く、あまり現場には出ない。

カナメに対する過度な愛情は、レズビアンじゃないかという噂が立つほど。その反面、自分の中のカナメ像が完全に確立しているため、カナメがその偶像に反した言動や行動をすることが気に入らない。マユミが守るものはこの「偶像」。それは自己に対する理想像でもある。


【嗜好】

フルーツ全般。カナメに倣ってベジタリアン。




■ 白澤洋二 (シラサワ

【プロフィール】

機関紙「デッドストック・トーキョー」の専属カメラマン。震災前はファッション誌のカメラマンだった。震災時に妻を亡くしている。妻の死後、カナメとの不倫が成就。妻を亡くしたショックと震災時に目撃した死の現場の光景からPTSDを患い、男性機能不全となっている。

シラサワが守るものはカナメとの平穏な日常。カナメの良き理解者。


【嗜好】

ジャン=リュック・ゴダール、フランソワ・トリュフォーなど古いフランス映画を好む。理由は「何の意味もないから」


■ 篠田育子 (イクちゃん

【プロフィール】

機関紙「デッドストック・トーキョー」の編集者、兼カメラマン。とにかく現場主義で、無鉄砲。カナメに可愛がられている(カナメからすれば使い勝手が良い)。悲惨な被災者の取材も果敢に行い、時にはカナメ以上の成果も出す。

カナメをめぐり、マユミに疎まれることもしばしばだがあまり気にしていない。

少し前にレイプ被害にあっている。


【裏プロフィール】

震災によって家族全員を亡くす悲劇に見舞われている。大家族(15人くらい)だったため、一時は想像を絶する喪失感に苛まれたがカナメの導きもあり持ちこたえた。家族が愛してくれていた「笑顔」をアイデンティティにしている。イクが守るものはこの、自分の「笑顔」。


【嗜好】

好きな食べ物はフランスパン。よく歯茎から血を出している。


■ 根木内沙羅 (ネギ、店長

【プロフィール】

レストランの店長。

沙羅という乙女っぽい名前があるのに、ネギとしか呼ばれない。




【裏プロフィール】

愛妻D。もともとこのレストランはネギの夫が始めたもの。夫もネギと呼ばれていた。この呼称は夫から引き継いでいる。夫は夜盗(王)に殺された。

ネギの守るものは夫の気高い理想の結晶であるこのレストラン。

ちなみにレストランに名前がない。なぜ「レストラン」と呼ばれるのかと言うと、作品の世界において、東京中探しても他にレストランは一軒として存在しないから。


【嗜好】

コーンポタージュ。白ワイン。コーヒーガム。食が細い。

音楽はビートルズだけ。よく「ノルウェイの森」を弾いている。


■ 橋口純一 (ハッシー

【プロフィール】

レストランの店員。記憶力が異様に高いが、それは瞬間的なもので、あまり持たない。

居住区を夜盗に燃やされたため、今はネギと暮らしている。

ハッシーの守るものはもちろん、このレストランとネギ夫妻との思い出。


【嗜好】

ハッシーの作るコーンポタージュはネギの夫から引き継いだもの。

世界一の自負がある。実際、ものすごいうまさ。


■ 野村美和 (ノムラ先生、ミワちゃん

【プロフィール】

学年主任。4年1組担任。不登校ゼロ。理想的な教師。教育理論や児童心理学などあらゆる知己に富み、教育には自信がある。いまいち不甲斐ない雨貝を常に心配している。

彼女が守るものは自分のプライド。後ろ盾を持ってくれるゴトウを信頼している。


【裏プロフィール】

潔癖的な部分がある。自分が雨貝を支えてきた自負がある。

【嗜好】

バニラアイス。


■ 雨貝八弥子 (アマガイ先生、ややこ

【プロフィール】

愛妻C。明るくさわやかな性格で、子供好き。ただし、やさしい接し方は長年彼女が培ってきた処世術でしかなかった。担任する子供たちにそれを見抜かれてしまったため、学級崩壊を起こした。(現在は鎮静化している)

彼女が守りたい(のにいつも守りきれず深く傷ついている)ものは、自分の中にあるイノセンス。

大人になりきれていない。


【裏プロフィール】

ティーンエイジャー時に受けたレイプのトラウマ、及び震災や職場でのあらゆるストレスの反動から、自傷行為としての売春をやめられない。男に対して依存的な傾向があり、現在はトリウミが自分を救ってくれる存在と信じ、結ばれたいと思っている。


【嗜好】

タバスコ、七味など刺激物を好む。味覚障害。


■ 後藤大信 (ゴトウ先生

【プロフィール】

震災後、教頭に着任。校長はハリボテなので学校における執務の実質的な権限を握っている。しかし、支援団体のあやつり人形でもある。支援団体が標榜する「復興後の自治と自立」とはつまり(極論としてではあるが)「東京を植民地化する」ということである。


その駒と成り果てている自分に疑念を持ち始めているが、まったく復興が捗らない上に治安も最悪の東京に生きる被災者が生き残るためには「毒も飲むべし」と考えている。

このストレスから人格が歪んでいる。

正当防衛という名目で人を殺すタイプ(実際に殺したことはない)。自分の正義を貫くことに容赦がない。彼の守るものは自分の仕事に対する大儀。


【裏プロフィール】

野村に惚れているが、人格の歪みから愛情表現が不器用すぎて高圧的な態度ばかり取ってしまう。


【嗜好】

たまご料理。


■ 鳥海正也 (トリウミ先生、トリウミくん

【プロフィール】

4年2組副担任。2組の学級崩壊により、雨貝のサポートを担当するべく着任。生徒達の暴走を止めたのは彼。現在は実質的に担任の業務を果たしている。

ゴトウの弟分。ゴトウに褒められることがなによりの喜びと感じている。

女性的な一面があり、温和で人当たりも良い。このことから依存されることに慣れており、土壇場では非情となることが多い。


【裏プロフィール】

雨貝とは同級生でもあった。雨貝の学生時のレイプ事件を知っている。




【嗜好】

ウイスキー。機械に強い。


※ 教師達は「上」の支援を受けているため、震災状況下においても裕福な暮らしをしている。

※ レストラン付近の住民達は自衛隊の庇護のもと自警団のようなものを組織運営しているが、教師達もまた前述の支援のもと独自の自治を勝手に施行している。要するに、現在の東京には「二種類の警察がいる」という状態。

※ ただしこれは独善的な行為であるため、地域住民から非常に強い反感を買っている。




■ 夢生 (ムウ

【プロフィール】

本名、金本夢生。在日。明るい性格。


【裏プロフィール】

夜盗の集団である「あいつら」と呼ばれる組織のメンバー。

夜盗となってからかなりの殺人を犯しており、麻痺し始めている。

自我と自意識が剥離し始めており、常に恐怖に苛まれている。無表情の割に感情が不安定。


【嗜好】

典型的なこてこてのアメリカンロックが好き。好き映画はマッドマックスシリーズ。


■ 王 (ワン

【プロフィール】

本名不明。王(ワン)と呼ばれていることから出自は台湾と思われるが、流暢な日本語を話す。


【裏プロフィール】

夜盗の集団である「あいつら」と呼ばれる組織のメンバー。

奪うという行為に一切の躊躇が無い。ネギの夫を殺している。最近はイクをレイプした。

実行犯的役割。オウムで言えば林や新実。

元はこのレストランでバイトをしていた。震災後、夜盗に堕ち、咎められ、ネギ(旦那)を殺す。


【嗜好】

ふ菓子

コーンポタージュが食べられない。


■ 小原 (オハラ

【プロフィール】

オハラと呼ばれる。知能が高く、「あいつら」の中でも一目置かれている。

【裏プロフィール】

本名は日浦洋子。日浦正一の妻。

愛妻E。

ある意味、主人公。




【嗜好】

赤いもの。


※ 「あいつら」について

集団化した夜盗ではあるが、その実は地域の労働組合が母体となっている。








【今回の台本で】

気に入っているのはアマガイ先生。

当初のプロットではこのレストランから逃げてしまう予定だった。

「逃げる愛妻」がいてもいいだろうと思っていた。

なのに。

出演時間も20分程度に収まる計算だったのに、なんか急に成長しだして妙に熱くなって、書き進めていくうちにとんでもない行動を取り出して、最後までいた。


こういう女だったんだ、といちいち気付かされる。

自分が考えて作り出した人物のはずなのに、そいつがコントロールをふりほどいて勝手にストーリーを作ってしまう。これはたまらんモノがあった。

感情の不安定なアマガイをバシっと演じてくれた東澤さんに感謝。


あと、

カナメ、マユミ、イクのデッドストック・トーキョーの三人も好きだった。

ストーリーの展開に則しながら変化していく感情の機微がよく書けた。「少年時代」みたいで。

その機微のキーとなる、マユミのセリフは自分でも好きなセリフが多いなあ。

なかでも、カナメがPTSDを起こした時、目の前でマユミが助けようとしているのに、

カナメがイクを呼ぶシーン。

「イクちゃん!イクちゃんは?…イクちゃん、笑ってくれないかなあ?」

おいおい、目の前に助けようとしてくれてる人いんじゃん。

そこでマユミが

「なんで私じゃないの?」

というセリフはすごく悲しくて、大好きだ。この三人の絆が壊れてしまう瞬間が。


カナメという、ある種カリスマとなる難しい役を演じきってくれたイチキさんに感謝。

このモチーフは形を変えても、またやりたいな。

女の友情、みたいなモチーフは大好物です。 

男よりも複雑で、面白い。 


男もいいなあ。

王(ワン)という役をやったんだけど、もっと長くやりたかった。

戦争に巻き込まれて、感情がどうしようもなくなちゃった男。

で、加害者に回った弱さ、とか。

こういうのをもっと描きたいね。

やっぱ戦争ものはいつかやりたい。バーっとね。

やるとしたら暗くなく、重くなく。しめっぽくなく。

かといって何もごまかさず、決して軽くもなく。

渇いた痛みのあるものにしたい。


「グッド・モーニング・ベトナム」の切なさと明るさに、タランティーノ一連のブラックユーモアを携えたような、そういう日本人の戦争の話。

できそうな気がするんだけどな。

「ウィンズ・オブ・ゴッド」とかいい線いってたけどな。

まあ、あれは結局左傾して幼稚になっちゃったからアレだけど。 


もっと渇いたものを。

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