リバウンドを取りに行くあの娘が高く飛んでいる時に (前編)

いつからロックンロールは多数派の快楽のデバイスに成り下がったんだ、と思う。
もう、ロックは100円ローソンで翌日に売られている50円のおにぎりじゃないか。
もともとはマイノリティが、マイノリティの魂の慰みと解放のために、
せめて魂だけは自由に、と、開発された音楽じゃないか。
どぶろくギターで、最高すぎるコストパフォーマンスで。
世界ではじめて、
世界ではじめて生まれた、「支配される側のための音楽」じゃないか。
世界中の個々の民俗の儀礼に内在する集合無意識を、人類の歴史上はじめて結び付けてしまった、
統合してしまった、奇跡の音楽。
それがロックンロールだったんじゃないのか。
誰でもできる、誰でも親しめる。
嗜好する人類が最も多いもの。
だから、フットボール(サッカー)とロックンロールこそが、世界の規律なんじゃないのか。
その規律こそが世界をロマンチックに保てる、
唯一の方法なんじゃないのか。
俺は両方とも大好きだ。
それを好きな僕を、無条件で受け入れて肯定してくれるから。
(ちなみに、昨今のユースカルチャーの定番となったヒッピホップもロックンロールの派生として定義してます。)
僕にとって、
ロックンロールの原体験はブルーハーツなので、
今夜はヒロトとマーシーについて書きたいと思います。
はじめは、「リンダリンダ」でした。
中学の文化祭です。僕は1年生でした。
身体的にまだ、陰毛も生え揃わない頃でした。
憧れの先輩が演奏してました。 歌っていました。
うちの中学はもともと、80年代にテレビニュースで報道されたほどに荒れた中学でした。
卒業式で火災が起きていました。
(しかもその主犯が僕の親戚で、入学の時点で僕は完全にマークされていました。)
教師たちは生徒の「騒動」に対して過敏でした。
つまり、riotに対して過敏でした。危険因子を持った生徒は体罰で抑制されていました。
教師たちは表現者である生徒サイドに「約束」を求めました。
仮に「騒動」が起きた際、今後の文化祭でのバンド演奏は二度ととりこなわない。と。
文化祭当日。
そのバンドは、2曲演奏しました。
ブルーハーツの「パンクロック」と「リンダリンダ」です。
まずは
「吐き気がするだろ?みんな嫌いだろ?」
と、挑発的なフレーズで始まりました。
ボーカルの栗原さんは、野球部で、上手くて、いつもニコニコしていて、長身で手足も長く、だけどたまに悪ぶって喧嘩もしたりして、とにかくかっこよかった。教師たちも一目置いていました。
栗原先輩の口から「吐き気」というすさんだフレーズが発せられた瞬間に、戦慄が走りました。
「何かが起きている。」
と。
ステージの最前列に整列していた3年生の先輩たちは覚悟していたんだと思います。
少し物々しい雰囲気でした。
「パンクロック」の演奏が終わり、
ギターを担当していた櫻井先輩がDのコードを静かに、シャランと鳴らしました。
「リンダリンダ」が始まりました。
今、思い返してみるに栗原先輩の顔はとても端整で、唐沢寿明に似ていたと思います。
その顔が唄う。
「ドブネズミみたいに美しくなりたい。」
クリーントーンのギターのコードストロークと
ボーカルの声。
その静けさは永遠に続きそうな静寂と、すぐ頭上の眼前まで落ちてきているナパーム弾のような緊張に張り詰めていました。
「写真には写らない、美しさがあるから。」
後ろから見る、3年生の先輩たちの背中は、破けそうでした。その背中から、何か現世のものではないものが弾け飛びそうでした。
そして、その瞬間は訪れます。
リンダリンダ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
体育館に、紙ふぶきが舞い散り、紙テープが乱れ飛び、絶叫とともに、3年生たちが飛び跳ねました。
「もしもぼくがいつかきみとであいはなしあうなら」
「そんなときは、どうか!愛の!いみをしってください」
ひと学年分の合唱が響き渡り、ステージ上の栗原先輩は唄いながら、宙に舞っていました。二度と降りてこないんじゃないかという高度で。
教師たちが怒鳴りながら生徒を抑止しようとしましたが、すぐにあきらめました。
押し寄せる人並み、落ちた紙テープは拾われ、何度も何度も宙を彩りました。
僕たち1年生はそんな先輩たちの背中を、
唖然としながら、歯を食いしばりながら…。
いや。
正直、そのときどんな感情でその光景を見ていたのか覚えていません。
えもいわれぬ。
というのが最も近い言葉でしょう。
僕たちは、完全に心を奪われました。
演奏が終わり、体育館にアンコールが鳴り響きました。
それはまなびやを突き破り、街中に轟くほどでした。
やがて収拾のために教師は殴り、怒鳴り、先輩たちの、純情の暴動はいとも簡単に鎮圧されました。
翌年、文化祭は執り行われましたが、バンド演奏は中止となりました。
(翌々年に、3年生となった僕たちがバンド演奏を復活させるのですが、それはまた別の話。ながくなるので。)
そこまで含めたこの経緯が僕のロックンロール原体験です。
前置きクソ長くて申し訳ない。
なにが書きたかったのかと言うと、
ヒロトとマーシーがいかに、ぼくたちの世代に影響をおよぼし、
また、おれたちその影響忘れちゃってねえか?
このうすらぼけが!
ということを書きたかった。
なんかもう疲れちゃったので、今日はここで。終わり。
とにかく、
僕は生きている限り、
死ぬまで、
「ぼくら」を肯定しつづけていきたいと思っています。
冬におぼえた歌を忘れた
ストーブの中 残った石油
ツララのように尖って光る
やがて溶けてく 激情のカス
音楽室のピアノでブギー
ジェリー・リー スタイル
骨身をさらけ出したその後で
散文的に笑う
渡り廊下で先輩殴る
身に降る火の粉払っただけだ
下校の時にボコボコになる
6対1じゃ袋叩きだ
鼻血出ちゃったし あちこち痛い
口の中も切れた
リバウンドを取りに行くあの娘が
高く飛んでる時に
心のないやさしさは
敗北に似てる
混沌と混乱と狂熱が
俺と一緒に行く
校庭の隅 ヒメリンゴの実
もぎって齧る ひどく酸っぱい
夏の匂いと君の匂いが
まじりあったらドキドキするぜ
時間が本当に もう本当に
止まればいいのにな
二人だけで 青空のベンチで
最高潮の時に
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